泊地情報  知多「富貴」〜兵庫県「洲本」

2015年の年末は回航ラッシュ。日本海の次は太平洋へ。 今回は愛知県知多にある「富貴」から兵庫県洲本市まで。潮岬周辺の新たな情報を得た貴重な1週間。

 慣れた海域でも急な天候の変化や艇のトラブルなど、何が起きるか分からないのが海洋レジャー。

 

仕事として回航を行う場合、クルーの安全確保は当然ですが、艇の状態を良好なまま納艇するため、極力マリーナなどを利用するのが当社の回航のスタイルです。

 

しかしながら相手は自然。予定通りに進まなかったり、天候の悪化など、予期しない出来事でスケジュール通りに行かない事も事実。

そこでリスク回避のため、事前に様々な泊地を調べておき、万が一に備えておくのもシーマンシップに結びつくのではないかと考えています。

 

クルージングや回航の一助となれば幸いです。

 

 

 

2015年12月13日、愛知県は知多にある富貴ヨットハーバーへ。大王崎、潮岬、日御碕を越えて洲本までの回航

 

 2015年の後半は回航ラッシュ。 年末のギリギリまで回航を行いました。

前回の特集でも書いた洲本→萩、その前には相生→淡輪のショート、今回の富貴への回航と前回の萩の回航の間にも岸和田→洲本という、整備や納艇作業、クラブ活動の合間に回航で埋め尽くす勢いでした。

 

 今回の回航は、何度もやっているルートなのでどこがどういう状況かはある程度理解しながらも、私にとってはあまり良い思い出のない海域で、距離は約250マイル。

黒潮の影響で西行きはキツく、天候の変化も考慮し、1週間程度の予定でスケジュールを組みました。

 

初日朝、高速バスにて三宮から名古屋へ。そこから車に乗り換えて富貴ヨットハーバーに向かう

 今年の冬は異常なまでに暖かい。12月も半ば近くでそろそろサンタクロースがやってくる時期だというのに、街は未だに秋の様相だ。割と軽装で朝にメンバーと三宮のバスターミナルで待ち合わせ、定時のバスに乗って3時間強。ウトウトしているうちに名古屋着。 

 ここから車で1時間程度走ったところにあるのは知多半島の中規模な町「富貴」。

ここに係留されている艇の回航に訪れたのだが、知多に来たのは初めて。想像していた田園風景とは違い、住宅地の中に突如ヨットハーバーが現れるといった感じだ。

 旧オーナー立会のもと、早速艇のチェックに入るがヨットに詳しい方で、気になる部分には全て手が入っていた。

こういうのはとても有り難い。船が古い新しいではなく、きちんと分かる方が普段からリスクを潰して下さっているヨットは大きな安心につながる。

そういった状況だったので、予定よりも早く検船を完了し、軽油や食料品の買い出しに出かける事にした。

 ここは買い出しにも便利で、まずハーバーから歩いて5分程度のところにホームセンターがある。そこからさらに2〜3分で富貴駅。電車に乗って少し行った半田はちょっとした町なので、買い物や食事も充分に間に合う。

我々はレンタカーで10分くらいの場所にあるショッピングセンターに向かい、食料品を調達した。

 

国内沿岸のロングに必要なのは、知識と少しの技術と飽きない食事。

 回航、特にロングをやっているといくつか課題が見えてくる。

それは、寒い時の暖のとりかたをどうするか、そして食事をどうするか。最後は航行中のトイレ問題。

 

 我々は自分の艇でクルージングするのではないので、100%片道のみの航行となる。自分達の管理する艇をどこかに回航するか、どこかにある艇を自分達のホームポートに持って帰ってくるか、クライアントからの依頼でどこかへ回航するか。

 

そうなると困るのが冬場の荷物だ。特にどこか遠方にある艇を自分達のホームポート(またはそれ以外の場所)に持って行く場合は、まず荷物に悩まされる。宅急便で送るにしても、マリーナならまだしも、そうじゃなければ預かってくれる所もない。かといってオイルスキンや着替えを入れていると余分な荷物を持って行く訳にもいかない。毎回現地で購入するのも無駄なので、どれもがコンパクトにまとまるもので軽いものを選ぶ事になる。

 

寝袋も最近では本当に小さくなるものがあるし、カセットコンロも小型のものならばダッフルバッグやスーツケースに収まる。

カセットコンロはこの時期には必須で、食事や飲み物の湯を沸かすのはもちろん、ストーブや濡れた服を乾かす際にも充分に使えるので私は必ず持参する。差し板を少しだけ開けておくかベンチレーターを開いておけば、過去の経験上問題はなかったが、これは保証しかねるので、自己責任で行って下さい。

 

 さて、毎回のロングで思っていたもう1点。

カップ麺が軽くて手軽だからと、大量に持って行った事があるが、これが3日も続けばかなりの苦行となる。

いろんな味やラーメン、うどん、ソバ、と種類を用意しようが3日目になると一括りの「ヌードル」となり、これがいつまで続くのかと、まだ食べていない大量のカップ麺を見てはため息をつく事になる。精神衛生上よろしくないし、必ず数日目には体が別の食べ物を欲する。

 

 そこで、ショッピングセンターに行き、いろいろと物色してみると、あるではないか。

雑炊や釜飯などのフリーズドライ食品の数々。小さくて軽くて、お湯だけあればすぐに食べられる。これとカップ麺、バナナやチョコレート、パンなどをうまくローテーションすれば嫌気がさす事なくロングを頑張れるのではないか。

 

 あくまで万一に備えての食料であって、泊地にスーパーなり食堂があればそれを利用すればいい。問題は、それすらない場合にどうするかを考えて、事前に準備をしておく事だと思います。実際に「それすらない」というのは港や島では珍しくも何ともないので、ロングをやると結構な確率でそういう場所に当たります。

 

 そして、上記のような食料でどの程度やっていけるのか、今回、実際にやってみたが、これは効果があった。ちなみに、フリーズドライのビーフシチューやクリームシチューもあったし美味しいので、これまでのヨットでの食事がワンパターンかつ苦痛を感じていた方は試してみて欲しい。

 

 仕事でやっている以上、贅沢な食事を楽しむ訳にもいかないので我々はこのような事を日夜考えながら回航している。

 

貧乏クルージングをお考えの方は、ご連絡を頂ければいろいろとアドバイスできますのでお気軽にご連絡を下さい。

 

 最後の課題のトイレだが、これは本当に深刻な問題だと思う。

我々のような2人での回航でも、トイレの時は四苦八苦する。しかも冬場でオイルスキンを着用している場合は特にだ。

ただの小用なのに、脱ぐのも大変。毎回、ギリギリまで我慢するのであまり体に良いとも思えない。ましてやシングルの方だと殊更に難しい。落水の危険もある。

 

そこで、我々が考えたのは、ここは割り切って(?)大人用のオムツを着ける。

そしたらまったく我慢する必要はないし、危ない立ちションもしなくていい。

毎回「やばい!」となって慌ててオイルスキンを脱ぎながら、次はオムツを用意しようと思うのだが、回航の時にはすっかり忘れてしまい、結局のところ未だに実践していないのだが、これは真剣に考えるべき項目だと思う。男性でキャビンのトイレに駆け込む人は少ない。となるとスターンあたりから用を足すのだろうが、本当に落水のリスクが高い。そう考えると格好などつけている場合ではない。オムツは我々も是非試してみたいと考えている。

 

回航初日は、大王崎「波切(なきり)」へ。

 さて、話しを戻して翌朝、早めの起床。食事は昨日調達したフリーズドライの雑炊とカップ麺を試してみると、これが結構うまい。さっさと腹に詰め込み準備を整えて旧オーナーを待つ。

10時頃に来ると聞いていたが、思っていたよりもかなり早く9時過ぎには来て下さった。

 そこで、出港前に少しばかりのアドバイスを受ける。

このハーバーの前にある一文字を抜けるとすぐに南下するのだが、どうもこの辺りは浅瀬があるらしく、一旦岸に近づいてから(といっても、岸から1マイルくらいは離れている)南に見える大きなマンションを目がけて行かなくてはならないらしい。

 マンションは分かりやすいので、指示通りに針路を向ける。マンションに向かってしばらく走ると結構なボリュームの網が入っているので、それを避けながら伊勢湾へと向かう。

 

伊勢湾まで4時間程度だろうか。段々と波が外海の様相を呈してきた。伊勢湾に入ると舵をやや右に切って大王崎方向に向かう。

この海域だが、名古屋の旧オーナー談では、伊勢湾付近には英虞湾、的矢湾などの危険な湾が結構あり、あまり進入するのはおすすめできない。あとは五ヶ所湾も注意。真珠や牡蠣の養殖が盛んで本船の往来も多く、かなり複雑でややこしいから、入る理由がない限りは行かない方が良いと言われていた。 

 

 実際に以前、この海域で大時化に遭遇し、命からがら逃げ込んだ鳥羽でもその言葉を実感する事ができた。暗礁、岩礁だらけだし、浅瀬も多く、そこを過ぎて港の近くに行くと牡蠣棚がずらりと並んでいて、その間をすり抜けるようにして舫をとった事がある。さらに網のエンドにある黄色いブイが時化で海面下に下がってしまっていて分からず、こいつが艇を突き上げた時には座礁でもして、もう死ぬんじゃないかと覚悟したものだ。 そんなこんなで逃げ込んだ先までもが難関だったので、かなり疲弊したのは記憶にまだ新しい。

 

 大王崎に向かう途中でふと鳥羽に目を向けると、そこには例の岩礁が白波に叩かれていた。あまり近づかないようにしながら沖を走り、目的地へと向かう。

 天気が良いとは言えないが、曇り空ながらも穏やかな中を進み、1700頃に無事に波切港(波切漁港?)に到着した。

 

初日からいきなり岸壁着けで、しかも風が微妙に岸に向かって吹いている。岸壁を変えて係留しようかとも考えたが、マットフェンダーを頼りに、あとはちょこちょこ調整してやり過ごす事にした。

 

 波切は大王崎のすぐ横・・・というかほぼ大王崎の中にあるような港で、クルージングの際に伊勢湾に入るようなルートではなく、御前崎方面や逆に尾鷲方向に向かう際の通過地点の泊地として考えると非常に効率の良い港だ。この辺りの泊地は湾の中が多くて、係留するにも一旦湾内に入らないといけない。それだけで1時間や2時間のロスになる事を考えると、大変便利な場所だと感じた。

 

 ただし、効率を重視するのであれば良いが快適かと問われると、ここには見事に何もない。夜は真っ暗である。

港から歩いて5分くらいだっただろうか、そこにある民宿「大王荘」でお願いするとお風呂を1人500円で借りる事ができる。この施設には食堂もあるので、もしかすると宿泊客ではなくても食事は提供してくれるかもしれない。

 

トイレはすぐ近くに公園があり、そこに綺麗なトイレがあったのでトイレに困るということはない。

 

※写真をクリックで拡大

 

※大王荘は文中の「大王荘」をクリックでホームページに移動

 

回航2日目、熊野古道「尾鷲」に向かう。

 波切では夜中に何度か舫の調整に起床し、仮眠をとりながら夜明けを待った。この時期は、日の出が遅く日没が早いので距離が稼げない。

 日の出と共に波切を出港し、この日目指したのは尾鷲である。尾鷲は以前の回航でもお世話になったが、今回は同じ尾鷲でも、尾鷲港を目指した。

この海域は数年前にシングルで回航中に時化に遭い、落雷も経験して命からがら通過した海域で、苦い思い出の場所でもある。

 今回はその時とは打って変わり穏やかな気候で、難なく進み予定時間より少し早めの1500頃には到着。

到着の少し前に雲行きが怪しくなったが、雨に遭う事もなく無事に着岸。

 着岸場所は分かりやすい。港に入る前から何やら大きな船が見えている。海保の巡視艇だが、こいつがまた大きい。それを目指して入ると、我々が着岸した時は入港してこちらから見て桟橋の右側に停泊していた。

巡視艇の停泊している逆側、つまり沖から見て左側の桟橋が空いていたので、そこの岸寄りに着岸した。

前情報によると、我々が係留した側の桟橋も、パトロール船だか何か忘れたが、やはり船がいるとの事で、できるだけ邪魔にならないよう岸に寄せておくのが良いだろう。実際、この日は我々が着岸した後でこの船が戻ってきた。長い桟橋なので、我々の後ろに着けていたが、いつもこういう状態なのかは分からないので、実際に港に行った時に臨機応変に判断して欲しい。

 

 


 遅い到着は心労が大きいが、早ければ早いほど余裕ができて良い。

予定より早い到着に、早速舫いをとり、周りを見渡してみると、幸いな事に目の前にガソリンスタンドがある。すぐに給油缶を持って軽油の補充を終わらせ、着替えた後、近くにあるという銭湯に行ってみた。

港からだと歩いて10分程度か。なかなか分かりにくい場所にあるが、近所のおばさんに聞いたら親切に教えてくれた。

かなり熱めの風呂に浸かり、回航の疲れを癒したら急にお腹が空いてきたが、尾鷲の街並を散策しながら食料を買い出しに行こうという話しになりプラプラと歩いてみる。

 熊野古道の町というだけあって、なにやら風情のある街並と、あちこちでミカンが安く売られている。駅が近い事もあり少し歩けば大型スーパーや飲食店が並んでいて、意外に街なのだ。観光気分でウロウロしながら食料品の調達を終わらせてみると、気分が緩んだのか、スジ煮込みだったかドテ煮だったか記憶は定かではないが、そんな事を書かれた暖簾に惹かれてつい入ってしまった。

 80過ぎだという女将が切り盛りしているこの店、とても80を過ぎているようには見えないくらい元気で、半分程の年齢の私が圧倒されてしまった。寒さの中から急に熱い風呂に浸かり、旨い焼酎と肴ですっかり酔ってしまい、ふらつきながら港に戻る。

 明日はまた長い。串本までの航路を確認しながらいつの間にか眠りについていた。

 

回航3日目、本州最南端「串本」

 我々がこの航路を回航する時、なぜかいつも泊地にしないといけない場所がある。それが串本だ。

毎回いろんな泊地を候補に挙げては、ここかな、あそこかなと検討するのだが、串本だけはどうしても寄らないといけない。

 他の泊地もあるにはあるのだが、距離が中途半端で、なかなかピシャリと合う泊地がない。あったとしても暗礁があるとか浅いとか、いろいろ聞くので、敢えてリスクを侵してまで大切なお客様の艇を係留する必要はないだろうという考えだ。我々の回航する艇がエンジンが小さいという事もあるのだろう。平均5ノット程度の計算なので、もっと俊足の艇であれば大きくプランは変わる。

 串本ではすっかり顔なじみの漁師さんもでき、立ち寄る度にご挨拶するという恒例の儀式までできてしまった。 どこででも知り合いがいると、何か困った時にいろいろ助けて下さったり心強い。尾鷲から串本の航路は特に難しいという事はない。

串本港に入った後、どこに係留するか?だが、以前回航の時、串本に初めて入港した時の事。

ネットでいろいろ調べていると、誰かが海保の巡視艇の後ろに着けたら良いと書いていたので、そのまま巡視艇の後ろに舫をとっていたら、海保の人間が飛んできた。

ここには係留はできないと言われて、じゃあどこだったら係留できるか聞いたところ、「港から入って左側(巡視艇の係留されている桟橋の左隣の港)の一番奥の道が走ってるところにみんな止めとるよ。」と言われて移動させた記憶がある。

それからというもの、いつも回航の時はそこに係留させて頂くのだが、この港は東から風が吹いていると結構キツい。

あとは干潮の際に着岸しようとすると、岸壁が結構高くなっているので、岸壁に飛び移るのはしんどい。

あまり快適な港とは言えないが、目の前にガソリンスタンドがあり、公衆トイレがあり、また、ホームセンターや飲食店、銭湯も立ち並ぶので一旦舫ってしまえば街にはいろいろ揃っている。

 いつもの場所に着岸し、セイリングジャケットとトラウザーズを脱いで早速町に向かう。12月の寒い時期だ。まずは風呂に入り冷えた体を暖めてやろう。徒歩圏内に2軒、風呂屋があるので回航時には便利である。(画像をクリックで拡大)

 

回航4日目、和歌山県「田辺港」を目指すが・・・

 朝目覚めてすぐに外に出てみると、やたらと風が強い。タバコに火をつけながらしばらく様子を見ていると、どこかで見た事のある軽トラックが通り過ぎていった。

この港ですっかり顔なじみになったJ丸の船長である。向こうは覚えていないかもしれないが、この人には前回の回航の時にすっかりお世話になり、我々の記憶にしっかり焼き付いている。

 早速挨拶に行くと「今日は出さんのやろ?」と聞かれた。あまりに風が強く、出すのは無謀だと判断されたのだろう。出すかどうか迷っていると伝えると、今日はどこまで行くのかと聞かれたので、田辺を予定していると答えた。すぐに向こう方面の知り合いの漁師に連絡をとってくれ、向こう側の海況を聞いてくれたが、「あかんあかん、向こうは真っ白らしい」との事で、「こんな日は寝るに限るぞ〜」と笑いながらどこかへ消えていってしまった。

 少しの間検討した結果、やはり出してみようという事になり、もし無理なら引き返せばいいと、とりあえずは沖に出てみる。

 

潮岬あたりに近年黒潮が超接近。ここは潮との闘い・・・のつもりが結局引き返す羽目に。

 串本大橋(だったと思う)というアーチ型の橋をくぐり抜けて沖に出ると、すぐに波が荒くなっている。

これはいつもの事で、我々の間ではこれが普通のように認識しているが、黒潮が西から東に流れている影響で、西行きはかなり厳しい。しかもここ数年は黒潮が潮岬に超接近しており、その影響をモロに食らう。さらにこの日は強い風が西から吹いていたので、完全に潮にも風にも逆らって上る状況である。大橋を越えて最初は5ノット強で進んでいたが、潮岬の灯台手前あたりからどんどん艇速が落ちはじめ、灯台が全く近づいてこなくなった。GPSを見ると1.8ノット!。これでは田辺に行くのは厳しいと判断し、急遽引き返し日和待ちをする事に決定。

 出港してここまで2マイル程度を約2時間。ほとんど進む事なく苦戦したが、引き返すのに進路を逆に向けた途端に艇速がみるみる上がり、港に戻るのに30分弱。これはあかんやつやと言いながら、J丸船長のアドバイス通り、キャビンで寝て待つ事にした。

 この状況を、今回の艇の旧オーナーであるN氏に連絡する。「うーん、やっぱりその海域は刻んで行くしかないでしょう」との回答。やっぱりか・・・という気持ちと同時に「明日も同じような状況なら、どう切り抜けよう」といろいろ考えるも、刻むしか手段がないなら航行時間を増やすしかないという結論に。

 とりあえず今日はのんびり寝て、明日は夜明け前には出ようという事になった。ここは何度か通っているので、真っ暗闇でない限りは問題ない。そう考えると急に腹が減ってきたので、近所のスーパーに買い出しに出かけた。

年末の寒さ厳しい時期である。アルミの鍋と野菜、肉、そして焼酎を買い込み、キャビンで鍋を作った。

ほどよい酔いと満腹感でこの日はさっさと寝てしまった。

 

回航5日目、今日こそ「田辺港」

 日和待ちで1日ロスした次の日、夜明け前には起床し出港の準備を進める。昨日より遥かに風が穏やかで、これなら大丈夫だろうと早速舫いを解いて出港した。

 大橋を抜けて、沖に出していくと太陽が昇りはじめている。波は荒いが風が昨日とは全然違う。これなら進める!と判断し、ずんずんと艇を進めていく。

黒潮の影響でやはり艇速は落ちるものの、引き返すほどのものではなく、3ノット程度でなんとか前に進んでいく。

 潮岬を越えたらゆるやかに舵を右に切って北上して行くのだが、潮岬→田辺(日の岬)間は私たちにとっては何かとトラブルが多い鬼門のようだ。

 前回は白浜辺りから日の岬を越えるのに、恐ろしく苦労したし、波も荒くとにかく厳しい海域である。

今回も例に漏れず、北上してしばらく行くと波が荒くなってきた。叩きまくるわスプレーで顔も服もガビガビになるわ、前には進まないわで、自然と口数が減ってくる。

 なんとかこうにか艇を進めながら、周参見という港(漁港?)の辺りを機帆走で航行していた時の事、エンジンの回転が微妙にばらつき始めた気がした。 二人で顔を見合わせしばらく様子を見ていると「ブスン、ブスン、ブスン・・・ピーーーーーー」。

「・・・・・・」どうやらザブザブと叩かれていたのでエアが入ったらしく、整備スタッフが工具を出してエンジンルームを開けてエア抜きを始める。 その間は帆走で進みながらなので、特に問題はない。風はさほど吹いていなかったが、なんとか帆走できる。波が荒く艇が大きく揺られる中なので、キャビンでエンジンを触っている方にとってはたまったものじゃない。

コクピットで「風がないなぁ〜」とセイリングしている私は気楽なものである(苦笑)。いざとなったら周参見に入って修理しようと港の入り口を見ているが、どうやら暗岩やら洗岩やらがあるようで、さすがにセイリング、しかも初めての港にアプローチするのは厳しい。

 キャビンでゴソゴソとやっている整備スタッフが、ちょっとエンジンかけてみてもらえますか!と言ってきたのでエンジンキーを回してみる。ブスンブスンと音を立てるが、エンジンがかかる様子はない。

 うーん、ここかなぁ・・・あそこかなぁ・・・とブツブツ言いながら作業をしているスタッフO氏を横目に、こちらは、もしもに備えてどこか避難できる場所はないかと思案する。

そうこうしているうちに、「もう1回エンジン回してもらっていいですか!」と声がかかったので、キーを回してみる。

「ガシュンガシュン!トントントントントン」と小気味良い音と共にエンジンが回りはじめた。これで約30分の時間ロスである。

この時期は少しの時間ロスで日没を迎えてしまい危険なので、念のため、手前に入港できる場所がないかも併せて調べながら進んで行く。

 沖に出ると波がひどいので、近づきすぎない程度に岸へ寄せて航行を続けると、そのうちに白浜温泉の街並が見えてきた。

 

 徐々に日没へと近づいてきているが、ここまで来れば田辺はもうすぐだ。前回はこの辺りの潮と波で大変な目に遭遇したが、この日は太陽がまだ沈んでいない。それだけで生きた心地がしている。

 田辺湾に入る辺りから、洗岩が所々に見えてくる。慎重に避けながら通り抜けるような感じで湾の北側まで行くと田辺港が見えてきた。写真の中央より少し右に大きな白いマンションがポツンと建っているのが分かるが、これが目印になっている。南側から進入していくとこのマンションは写真の左に見える島のような出っ張り(天神崎と言う地名?らしい)から少しだけ見えており、出っ張りとその横のマンションを見つければ良い。これは南側からアプローチして行くと、ちょうどまっすぐ目の前か、目の前より少し右に見えるので比較的分かりやすい。

ちなみにこのマンションのところがシータイガーというマリーナで、ビジターでも使用可能かもしれない。

我々はこのマンションの右にある田辺港に入るのだが、入港口は同じである。この日はギリギリ日没の直前に田辺に到着し、無事に舫う事ができた。

風呂、飲食、買い出し、給油となんでも揃う便利な町。

 田辺では入港してすぐの岸壁に着けた。漁港の中に入るよりもその方が安心だし出港もしやすい。

 陸に上がりいろいろ散策してみると、歩いてすぐの所に幹線道路があり、その道路沿いには飲食店やスーパー、ドラッグストアにGS、銭湯などが立ち並ぶ。24時間営業のスーパーもあるので、買い物に苦労する事はなく、飲食もチェーン店がたくさんあるので便利だ。

 肝心のトイレも、漁港の奥に市場のようなものがありそこの一角に公衆トイレがあった。

 歩いて10分程度のところにある銭湯に行き、疲れを癒すと次は食欲が湧いてきた。串本で作った鍋の材料が残っていたので、追加の食材を買い出し、昨日の鍋の続きをすることにした。

 寒い中、海上に1日中いればこういう食事がありがたい。陸にいればいろんな誘惑と選択肢が用意されているので、何かと迷うが、海の世界は非常にシンプル。生きて、食って、寝る。ただそれだけの事が有り難かったり、大事だと感じたり、デトックス効果のようなものがあるのかもしれない。

 回航と言えども一旦海に出てしまえばサバイバル。途中で死を感じた事もあれば、自分の技術や知識のなさに不甲斐なさを感じる事もある。そのかわり、息をのむような美しい風景に出会ったり、様々な人達に暖かく受入れられたり。ちょっとした事が何倍にも増幅されて感じるこの感覚は、海の乗り物の中でもヨットだから味わえる部分もあるのかもしれない。

 

 

※当社商品のご購入にあたって、ご購入前にこちらをお読み下さい

※画像、コピーの無断転載禁止


ヴィエント・フレスコ 株式会社

【本社オフィス】

兵庫県神戸市西区伊川谷町前開1164-18

Phone 078-964-5351    Fax 078-964-5352

 

【新島DOCK】

兵庫県加古郡播磨町新島1  JFEプラントエンジ株式会社 播磨製作所内

 Phone 050-3354-4363